「当たり前」に待った! どうしてそう考える?という分析を。
デート代は誰が払うべき?そこには「政治」がある
―高校の「政治・経済」は暗記が中心。大学で学ぶ「政治学」とはどんなもの?
「政治」をどう捉えるかによって政治学もさまざまですが、私の授業では、「特定の人々の間で利害を調整し、意思決定を行い、それを実行する過程」として広く捉えます。そう定義すると、政治学の対象は、選挙や国の制度など公的なものから、社会や個人の間での利害調整など私的なものまで含まれます。政治学というと、一般的に「公」の関係のイメージが強いと思いますが、授業ではより身近な「私」の関係、さらには国家と個人・社会など「公」と「私」の関係も扱います。
―私的な関係と政治(学)とは結びつきにくい(イメージしにくい)ですね。
たとえば、「デート代は、彼氏と彼女のどちらが負担すべき?」と聞かれたら、どう答えますか。また、それはなぜでしょう。大事なことは、「男性(あるいは女性/双方)が支払うべき」といった特定の意見が正しいか否かということではありません。特定の意見を「当たり前」とせず、それが「なぜ」、「どのように」形成され、あるいは変化するのかを問い、その答えを「政治」に求めるものが政治学といえます。社会において支配的な考え方は、そのときの社会における政治的な力関係を背景としている、というのが政治学からの回答のひとつです。
―デート代から政治(学)を考えることもできるのですか?
少し前まで主流だった「男性が支払うべき」という考え方は、戦前~戦後に定着した「男性稼ぎ主モデル」を背景としています。そこでは、男性より下位にある女性を「養う」という社会規範が形成され、それに基づいて私たちの日常の振る舞いも形作られてきました。つまり、私たちの日々の「当たり前」は、大きなレベルでの男性と女性との間の権力関係=政治的な力関係から影響を受けてきたといえます。男女間の格差も残っていますが女性が働くことが「当たり前」になった今、若者の答えはより多様になっていますね。
―政治は国家の話だけではないのですね。
人が二人以上いれば成立する「社会」において、利害調整や意思決定に影響力を及ぼすのは「権力」です。いわゆる国家権力といったマクロなレベルから、私人間で働くミクロなレベルまで権力が偏在することを考えると、政治は社会のいたるところにあるといえるでしょう。
政治学的考え方を通して、新たな可能性を拓いていく

―私たちの普段の暮らしに権力はどう関わっているんですか?
権力は、必ずしも目に見えるものとは限りませんし、私たち自身が無意識に権力を行使していることだってあります。たとえば、会社で誰かが残業していると「自分も残業しなければ」と、見えない力に従ってしまう。「空気を読んで」残業することは、自分が見えない権力に従うことを意味するだけでなく、別の誰かに対して「空気を読め」というメッセージを発信することでもあります。そう考えると、過労死の問題は、個別の企業や制度の問題だけでなく、私たちの振る舞いを規定する社会の「常識」によって引き起こされる面もあります。政治学の授業が、普段、ニュースや新聞で目にする社会問題に、自分がいかに関わっているかを考えるきっかけになってくれたらいいですね。
―「常識」をあえて疑問視することが大事なんですね。
そう思います。フェミニズムは「個人的なことは政治的なことである」と主張してきました。男女間の関係など、プライベートな問題と思われている事柄にも実は社会に存在する大きな権力関係が関わっていること、それゆえ一見プライベートな問題と思えるような問題も社会的・政治的な課題・争点となりうるということです。私たちの日々の暮らしを取り巻く「当たり前」の仕組みは、私たちを「守る・支える」ものであると同時に「縛る」ものでもあり、それを問い直すことは生き方を広げる可能性を開くことにも繋がるのではないかと思います。
―大学生活・社会生活の過ごし方や就職活動の取り組み方も変わる気がします。
政治学の学びを通して、身につけてほしいのは相対的な考え方。コップは視点によって形が違って見えます。それと同じで、事実は一つしかなくても、見る場所によって見え方や解釈は異なる。自分とは異なる他者の立場に立つと、これまでの常識とは違って見えることがたくさんあります。それらを発見していくことで、いろいろな人と出会い、話し、繋がっていく可能性を広げてもらえればと思います。
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