大切なのはフィールドに足を踏み入れ 理論と政策を結び付けて考えること。
経済学部で林業?多様な切り口は間違いなく魅力的!
―元々の専門が林業というのは、経済学部では意外な感じがします。
私は、「森林」を起点にして、戦後日本の地域開発の在り方を捉え直すことに興味を抱きます。林業は、山村住民の生活の糧を生み出し、国土保全を担う一方で、リゾート開発などその時々の「豊かさ」を追い求める陰で翻弄され続けてきました。長期的な視点を見失った国土づくりが何をもたらすのかは、近年頻発する自然災害の甚大な被害が物語ります。「森林」という「小さな」のぞき窓から、安心してずっと暮らしていける地域をどう形作るのかという「大きな」課題に迫ること。これが私の経済学、開発政策論のテーマです。
―農業や漁業が専門の教員もいらっしゃいますね。
農林漁業の専門家がそろう国内唯一の経済学部です。また、本学部の強みは、教員の専攻と担当科目(ゼミを含む)がリンクし、研究と教育が密接に重なっていること。学生が個性を磨く環境が整えられています。
―先生が担当している「開発政策論」も、研究内容とリンクしているわけですね。
残念ながら、講義の中で「森林」に触れることはあまりありませんが、問題意識は一緒です。講義は二つの視点で進めています。一つは「空間」の視点です。国内と海外の事例に目を配ることで、実は北海道が世界史に刻まれる開発の地であることを認識してもらいます。もう一つは「歴史」の視点です。私たちの暮らす国土がどのように変貌してきたのか、そこに開発政策はどう関わってきたのかに迫ります。
―「空間」と「歴史」の比較を通じて、北海道を見つめ直すということでしょうか?
本学の学生の多くは将来、道内経済の最前線を担っていきます。また、国際的にも貴重な経験を実地で学ぶことは、どの場所で生きようとも参照すべき知見です。だからこそ、足元の北海道をちゃんと知ってほしい。最終的には、人々が生まれ育った地で安心して働き暮らすために必要な政策とは何か(=開発政策)について、自分なりの答えを導き出してほしいと思います。
座学と現場。両方が噛み合ってこそ成長できる

―ゼミ単位で行う「地域研修」では、どんな取り組みをしていますか?
私のゼミでは、先輩と後輩がペアになって専門書を読み込み、報告することから始めます。続いて、学生間で議論して決めた研修のテーマに沿って事前学習を行います。問題意識をクリアにして、既知ではなく、現地でしか得られない情報を得ることにこそ研修の醍醐味があります。研修先は隔年で道内と道外へ。北海道中川町(2017年)や、原子力災害に見舞われた福島県田村市(2018年)では森林を踏査し、山村経済を立て直す道筋を学びました。2019年は北海道寿都町を訪問し、地域資源(山、海、風)に根差した産業振興の在り方を森林や漁港に足を運んで考えました。
―先生は、学生たちを外に連れ出したいという考えのようですが。
私には、座学で得られた知識と、自らの体験を通じて得た知識は違うはずだ、という思いがあります。2泊3日という短い間でも、きっと新しい何かを発見できます。日々の座学で得た知識と、体験で得た知識を噛み合わせることができれば、そして、それを自ら言葉を紡いで表現していくことができれば、こんなに素敵な学びはないと思います。
―現場での体験を通して、学生にはどんな変化がありますか?
何を聞くべきか分からず戸惑っていた2年生が、3年生になって自ら手を挙げ(ときには震えながら…)、質疑応答する姿に毎年感動しています(笑)。また、親身に対応してくれる市町村職員の方々に接して、公務員を目指す学生もいます。
―先生のもとで学ぶ経済学は、刺激を受けられる機会が多そうですね。
フィールド色は濃いと思います。ヘルメットに長靴で山にも畑にも牧場にもどんどん入るし(笑)。私には、道内のほかにも「定点観測」の地があります。原子力災害下の福島県、雪深い山村が点在する山形県(前任地)、過疎発祥の地の鳥取県(前々任地)、そしてEU離脱に揺れるイギリス※です。各地の事例を織り交ぜながら講義を展開したいし、いずれは学生も連れていきたいですね。
※取材後、2020年2月1日にEU離脱。
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